忙しい上司には「二案作戦」
さまざまな場面で応用が利く「頭出し連絡」ですが、相手があまりにも多忙な場合は、 ラフな案の段階で頭出し連絡をしても脳にインプットされにくく、効果が出にくいという弱点があります。そんなときは「二案作戦」を試してみてください。
私はこのテクニックを楽天時代の上司から学びました。
楽天市場で新しいweb企画を通すためには、部長や役員クラスの決裁が必要になりま す。しかしながら「上」の人たちは非常に忙しいため、ざっくりした案では真剣に取り合ってもらえません。
そんな中、私の上司である部長が、さらにその上の役員に企画案を持っていく場面に同 席させてもらう機会がありました。そこで部長は何をしたかというと、AとBの二案を持 参し、その場で役員に選ばせたのです。 「これこれこういう理由で二案用意しました。どちらがいいと思われますか?」
そう聞かれた役員は、しばし真剣に考えたのち「よし、A案でいこう」とその場で回答しました。
これがもし一案だけの提案だったら、どうなっていたでしょう。
役員の頭には反射的に「もっといいものができるのでは」「別の切り口からも考えてほ しい」という思いがよぎり、「この案も悪くないけど、もう少し考えて1週間後にまた持ってきて」という流れになったのではないかと思います。 しかし部長は2つの案を用意することで、そうした「反射的なダメ出し」を封じて即決させた。それはつまり、再提出のために要したかもしれない1週間をまるごと時短したということです。
そばで見ていた私は「これはすごくいい!」と感銘を受け、以後、部長と同じように二案作戦を実践するようになりました。
AとBに同じ労力をかける必要はない
「AとBの二案を作るのは大変だから、その場でOKをもらえたとしても、トータルでか かる時間はプラマイゼロになるのでは」と思われるかもしれませんが、実は「二案目」を作るのはとても簡単なのです。
まず理解してほしいのは、二案用意するのはあくまでも「ダメ出しを防ぎ、その場でOKをもらうため」のテクニックだということです。どのみち片方はボツになるのだから、 A案とB案の両方に均等に力を入れる必要はありません。
私の場合は「本命のA案」をしっかり作り込んだのち、それをアレンジして「当て馬のB案」を作ります。A案に割く労力が だとしたら、B案には1の労力しかかけません。
アレンジの切り口としては「ターゲット」「予算」「デザイン」などが考えられます。大 枠は同じでも「A案は若者向け、B案は 代向け」「A案は予算100万円、B案は予算150万円」「A案は赤ベースのデザイン、B案は青ベースのデザイン」など切り口を変えて提案すれば、相手は「どちらかといえば、こちらがいい」とその場で考え、回答してくれるでしょう。
ただしA案B案それぞれに「理由」を用意することだけは忘れないでください。「なぜその二案を作ったのか」「どういう理由で迷っているのか」を明確に説明できるようにし ておかなければ、上司へのプレゼンテーションになりません。
提案書の見た目を変えよう
もう1つ大事なポイントが、提案書の「見た目」を変えることです。たとえA案B案の中身が90%同じでも、提案書のぱっと見が違っていれば、相手は「ちゃんと二案も考えてきた」と認識してくれます。
提案書の「見た目」は写真やデザインなどのビジュアルで決まります。テキストはA案 の流用でも、その脇に添えるイメージ写真を変えれば、それだけでガラッと違う印象にな ります。
具体的には、A案の提案書をコピーしたら1「20代向け」と書いてある部分を「30代向 け」に直すなどテキストを少しだけ修正する、2文字のフォントや色を変える、3写真を変える、このわずか3ステップで「当て馬のB案」が完成します。一案だけで勝負して作り直しや再考を命じられるくらいなら、短時間でチャチャッと二案目を作って持参する方が、ずっと時短になるのです。
「ほとんど同じじゃないかと怒られそう」と心配する方もいるでしょうが、そもそもこの 二案作戦は「脳への事前インプット」の効果が見込めないほど超多忙な上司向けのテクニックです。超多忙な上司は、部下の提案書を隅々までチェックするわけではないので、 細かい部分を指摘される可能性はかなり低いと思われます。私もこの作戦を長く展開してきましたが、「A案もB案も大差ないね」などと指摘されたことは一度もありません。
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